NOAH 海外活用事例:ブルック・ロペス 〜データが変えたベテランのシュートフォーム〜
- Ador Bitaraf
- 19 時間前
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更新日:36 分前
概要
NBA・ミルウォーキー・バックスのセンター、ブルック・ロペス(当時34歳、キャリア15年目)は、2022年夏のオフシーズンにシューティングコーチとNOAH Shooting Systemを活用し、3ポイントシュートのフォームを科学的・定量的に改善した。この事例は「ベテラン選手でも計測データをもとに短期間でフォームを改善できる」という強力な実証例であり、Bリーグの現場でも即応用可能な示唆を含む。
NOAH Shooting System(ノア・シューティング・システム)とは?
ノア・シューティング・システムは、リングの7フィート(約2.1m)上方に設置したカメラおよびセンサーとスピーカーシステムを組み合わせたシューティング計測ツールである。「NOAH(ノア)」という名前は、聖書のノアの箱舟(NOAH's Arc)とシュートの弧(Arc)を掛け合わせたネーミングで、もともとは シュートの弧の計測に特化して開発された。
計測できる3つの指標
指標 | 単位・範囲 | 意味・活用法 |
① Arc(入射角) | 度(°) | シュートの軌道の高さ。最適値は45°。高すぎ・低すぎを即時フィードバック |
② Depth(深さ) | インチ(0〜18) | ボールがリングのどの位置に落ちるか。最適はリング中心より約5cm深めの11インチ(バックリングを掠めて落とすシュートが最も成功率高い) |
③ Left/Right(左右ズレ) | インチ(−9〜+9) | 左右のズレ。0(中央)に近いほど理想的。フォームの歪みを特 定できる |
✅ リアルタイムフィードバック:シュート直後にスピーカーから数値が音声で即時出力されるため、選手は感覚だけでなく客観的なデータをもとに自分の シュートを評価・修正できる。
各シュートの計測値・グルーピングをビジュアルで確認可能

出典:The Athletic(2022年11月)掲載のNoahレポート画面キャプチャ(画像1)
ブルック・ロペスの活用事例(詳細)
1. 背景と課題設定
ロペスは2018年にバックスに加入して以来、ヤニス・アデトクンボのためにペイントゾーンを広げるべく積極的に3ポイントを打ち続けてきた。しかし2021-22シーズンは背中の手術から復帰した影響もあり、3ポイント成功率は本来の水準を下回った。2022年夏、シューティングコーチのジョン・ウェルチ(元NBA数チームのアシスタントコーチ)とともにNOAHを使った集中的な改善セッションを実施した。
2. トレーニングの実施体制
場所:ウォーキーシャ(ミルウォーキー近郊)の専門トレーニング施設「The Pro Lane」(NBA用ハーフコート×2、NOAH設置済み)
● 体制:コーチ2名+映像担当1名+ボールパーソン1名+パサー1名、計5名がロペスのシュート1本に集中
● 期間:7月に集中1週間 + 8月末に追加1週間(合計約2週間)
内容:30フィート(約9m)のキャッチ&シュートを中心に、様々な足の幅・角度・リリースポジションを試行
3. 発見された課題と改善プロセス
(a)入射角の過剰
NOAHをArc(入射角)読み上げモードに設定して計測したところ、ロペスのシュートは弧が高すぎることが判明。ダーク・ノビツキーのような 高弧のイメージを持っていたが、実測値で理想値を確認した結果、ロペスの最適な入射角は44°(45°よりわずかに低め)であることが分かった。
【動画1】Arc(入射角)読み上げモードでのシュート練習(入射角の読み上げ音声付き)
(b)足の向きとスタンス幅の問題
前シーズンは背中の手術の影響でシュート時に足を斜めに向けていた(バスケット正面ではなく角度がついていた)。これがスイングモーション(ボールを身体左側・頭の後方に引く動作)を引き起こし、左右のズレを増大させる原因となっていた。実験の結果、足をバスケットに正対させ、肩幅に開くフォームが最適と判断された。
【動画2】Left/Right(左右ズレ)読み上げモード:足を閉じる→広げる実験
【動画3】前シーズンの問題フォーム例(足が斜め)(2022年3月試合映像)
(c)リリースポジション(深さ改善)
ボールを顔の前(前方)からリリースするフォームと、頭の後方からリリースするフォームを比較実験。最終的に、ボールを身体右側に沿っ て真上に引き上げ、前方でリリースするフォームに統一した。
【動画4】Depth(深さ)読み上げモード:リリース位置の前後実験
(d)ハンドポジション(グリップの最適化)
右手の指の広げ方を実験。最終的に親指と人差し指でシュートを打ち出すように意識することで左右のブレが減少した。
【動画5】Left/Right(左右ズレ)読み上げモード:指の広げ方実験
4. 確立された「理想フォーム」の4要素
# | 項目 | 改善後の基準 |
1 | スタンス | 足をバスケットに正対させ、肩幅に開く |
2 | 肘の位置 | 右肘を身体右側に密着させる |
3 | ボールの軌道 | ボールを頭の前に置き、身体右側に沿って真上に引き上げる |
4 | ハンドポジション | 右手を広げ、親指と人差し指でボールを送り出す |
数値目標:入射角44° / 深さ11インチ(Back rim and down = バックリングを掠めて落とす) / 左右ズレ ゼロに近い値
成果と効果検証
指標 | 2021-22シーズン(改善前) | 2022-23シーズン序盤(改善後) |
3P試投数/試合 | 低調(手術復帰後) | 6.4本(キャリアハイ) |
3P成功率 | 低調 | 35.7%(初年度水準に回復) |
フォームの安定性 | 足の角度・スイングで左右ブレ大 | 左右のバラつき大幅減少 |
チームはその後、練習施設「Froedtert & MCW Sports Science Center」の主要4バスケット全てにNOAHを常設。顔認証機能により選手ご とのシュートデータを自動で蓄積・管理できる環境が整備された。
注目すべき「学習プロセス」の特徴
ロペスの事例が単なるシステム導入事例以上の価値を持つのは、その学習の質にある。コーチのウェルチは以下を証言している。
ロペスはセッション中、スマートフォンにメモを取り続けた(当初コーチは怒っていたが、実はノートを取っていたと判明)
2週間のブランク後もすべての用語・フォームを完璧に再現した
概念を短縮コードで記憶:「Dirk(ダーク)」=指を広げる、「Steph(ステフ)」=フォロースルーを真っすぐに
34歳のベテランが自ら「もっとうまくなりたい」と主体的に課題を設定した
Bリーグ・Wリーグへの示唆:Noahの導入効果は機器性能だけでなく、「コーチング設計」と「選手の主体的関与」の掛け合わせで最大化される。ツールと人が一 体になったアプローチが重要。
まとめ
NOAH Shooting Systemは「リアルタイム音声フィードバック」×「セッション後のデータ分析」の二重構造で、選手の感覚と数値を同期させる 画期的なツールである。ブルック・ロペスの事例は、34歳のベテランが約2週間の集中セッションで計測可能な形でシュートフォームを改善したという点で、年齢・経験年数を問わず導入効果が期待できることを示している。Bリーグ・Wリーグにおいても、シュート力の定量化・客観化を通じ た選手育成・競技力強化のツールとして有力な選択肢となり得る。
本資料はThe Athletic掲載記事How Bucks' Brook Lopez reinvented his 3-point shot with the help of 'Noah(Eric Nehm, 2022年11月11日)をもとに作成した要約・翻訳記事です。


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