top of page
Ryoma Nakagawa

データ駆動型アプローチで選手育成と試合戦略を強化: テキサスA&M大学女子バスケットボール/S&Cコーチの洞察

近年、スポーツ業界ではデータ解析の重要性が急速に高まり、特にバスケットボールの現場では選手のパフォーマンス向上に向けたデータ駆動型のトレーニングが広がっています。本記事では、テキサスA&M大学女子バスケットボールチームのヘッド・ストレングス&コンディショニングコーチであるヨランダ・ベリーヒル氏が、どのようにデータを活用して選手の育成とチーム戦略を強化しているかについて紹介します。


データ駆動型アプローチのはじまり


ヨランダ・ベリーヒル氏は、自身のキャリアの初期にはデータを活用したトレーニングはほとんど行われていなかったと振り返ります。初めてトレーニングにデータを取り入れたのは、アパラチアン州立大学でアスリートの負荷を監視するための基本的なトラッキングシステムを導入したときでした。当初は懐疑的でしたが、データに基づくアプローチが徐々に有効であると実感し、次第にその価値を理解していきました。


ジョージア工科大学での経験を経て、ベリーヒル氏はデータの重要性を認識し、選手のパフォーマンス向上に向けたトレーニングプログラムにデータを組み込む方法を学びました。テキサスA&M大学に転職後は、データシステムの導入を決定し、KINEXONを採用。このシステムは、アスリートの負荷管理や位置データを基にしたパフォーマンス分析に特化しており、選手のトレーニング内容を詳細に分析することを可能にしました。


データ活用による選手育成の変化


ベリーヒル氏は、データを使用することで選手とのコミュニケーションが変革したことを強調します。シュートやフィジカルなパフォーマンスをデータで可視化することで、選手は自分の強みや弱点を客観的に理解でき、成長を実感できるようになったといいます。特に、以前は精神的な壁に直面していた選手たちが、データに基づくフィードバックを受けることで自信を持ち、パフォーマンス向上に積極的に取り組むようになったことが大きな変化でした。


また、選手が得意とする「コンフォートゾーン」を特定し、そのエリアからシュートレンジを広げることに成功したとも語ります。データによって、選手は自分の能力に自信を持ちながら、新たな挑戦に取り組むことができるようになり、より多様なシュート技術を身につけることができました。



主要なデータとその活用方法


テキサスA&M大学では、特に以下の3つの重要なデータメトリクスがトレーニングと選手育成において活用されています。

  1. AAL(Accumulated Acceleration Load)AALは、選手の累積負荷を示すデータであり、トレーニングの強度やボリュームを管理するために使用されます。このデータを基に、選手が過度な負荷をかけ過ぎていないか、または十分に強度を上げているかを評価します。これにより、選手は怪我を防ぎながら適切な負荷でトレーニングを進めることができます。

  2. 距離(Distance)距離データは、選手が練習中に移動した総距離を追跡します。これにより、コーチは選手がどれだけの移動量をこなしているか、試合に必要な走行距離をどの程度こなしているかを把握できます。このデータは、特に守備や攻撃におけるエネルギーの使い方を最適化するために活用されます。

  3. 心拍数(Heart Rate)心拍数は、選手の心肺機能とトレーニングの負荷状態を監視するために使用されます。これにより、選手がどの程度高い強度でトレーニングしているかをリアルタイムで確認でき、必要に応じて休息を取るタイミングや強度を調整することができます。

これらのデータを駆使することで、ベリーヒル氏は選手一人ひとりのパフォーマンスと健康を最適化し、効率的なトレーニング計画を立てています。


データによる信頼構築と効率的な育成


データは選手のパフォーマンス向上に貢献するだけでなく、選手とコーチの信頼関係の構築にも重要な役割を果たします。ベリーヒル氏は、過去にシュートに制限をかけられていた選手の成長をデータを使って示し、その選手の自信を回復させた経験を語ります。データに基づくフィードバックは、選手にとってもコーチにとっても説得力があり、より効果的な育成につながることが証明されています。


データは、選手にとって自分の成績を把握し、改善点を理解しやすくするため、トレーニングのアプローチがより効率的で戦略的に行えるようになっています。


実際の試合に役立つデータ


データ駆動型のトレーニングが試合でのパフォーマンスにどう影響するかについても、ベリーヒル氏は言及しています。特に、オフシーズン中に選手の負荷を管理するためにデータがどれだけ役立つかを強調し、試合に向けて適切な準備ができているかを確認するために、トレーニング強度を細かく調整していることを明かしました。これにより、選手の状態が最適化され、試合に備えて十分な準備が整えられます。


また、データはケガから回復している選手や慢性的な問題を抱える選手のリハビリにも重要です。ベリーヒル氏は、データを追跡することで、選手が安全に、かつ効果的に試合に復帰できるようサポートできると述べています。


データによるモチベーション向上


データは、特に試合に出場する機会が少ない選手たちにもモチベーションを与えます。選手は、自身の進歩を数字で確認できるため、トレーニングに対する積極的な取り組みが促進され、自己成長を実感しやすくなります。



女性スポーツにおけるデータ活用の未来


ベリーヒル氏は、女性スポーツにおけるデータ活用の進展についても言及しました。特に女子バスケットボールでは、データの活用がまだ発展途上であることを認めつつ、今後ますます重要になっていくと確信しています。女性アスリートの育成におけるデータの役割が大きくなることで、選手のパフォーマンス向上とチーム全体の成績向上が期待されます。


バスケットボールパフォーマンスコレクティブ(BPC)への取り組み


インタビューの最後では、ベリーヒル氏が「バスケットボールパフォーマンスコレクティブ(BPC)」についても触れました。このプロジェクトには、スポーツサイエンス、コーチング、ウェルネスの専門家が集まり、女性アスリートの発展を支援するための知識共有の場として設立されました。彼女は、このイニシアチブが様々な専門家の協力によって、より創造的で効果的なトレーニング戦略を生み出す手助けになっていることを強調しています。


まとめ


ヨランダ・ベリーヒル氏のインタビューからは、データ駆動型アプローチがどれだけ選手育成とチーム戦略において重要な役割を果たしているかが明確に示されました。データを活用することで、選手のパフォーマンス向上や健康管理に加え、コーチと選手との信頼関係を強化し、より効果的な育成が実現できることがわかります。データは今後ますますスポーツの現場で重要なツールとなり、特に女性スポーツにおいてもその活用が広がることが期待されています。


スポヲタが提供するテクノロジー


弊社は、日本のスポーツ界にもこの先進的な技術を導入し、選手の怪我予防、パフォーマンス向上をサポートします。「KINEXON」をはじめとするテクノロジーに関心がある方や、コラボレーションを希望される方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


※本記事は、下記を翻訳・加筆修正を行い、提供しております。


閲覧数:22回0件のコメント

Comentarios


bottom of page