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スポーツテックとジェンダー平等:KINEXONが女子チームと男子チームを同等に扱うことを止めた理由

NBAの7割以上のチームが導入する最新鋭トラッキングシステム『KINEXON』の専属スポーツ・サイエンティストであるヤーナ・ヒューベル氏は、スポーツ科学における研究の大部分、つまり科学的なトレーニング計画の基礎が男性アスリートに基づいていることから、運動計画の面で女性と男性がほとんど同じように扱われている現状に疑問を抱いている。


ヒューベル氏たちは、女性アスリート、トレーナー、アナリストとのディスカッションを通して、性別に応じたトレーニングや負荷制御における要件定義と男女間のデータ量や知識量のギャップを埋める必要性をより強く感じているという。その理由については、幾つかの例を挙げて以下のように説明している。


プロスポーツにおける性別に応じたトレーニングと負荷制御の要件:


1. 身体的要件

男性と女性のホルモンや生理的なシステムは、ほとんど比較できないため、女性アスリートに基づく研究の普及が必須となる。幾つか例を挙げると、①女性は骨密度が低く、②体脂肪率が高く、③筋肉量が少なく、④周期的なホルモンの変動がある。負荷分析では、女子チームのために女性の条件を考慮する必要がある。つまり、女性同士を比較すべきなのだが、男性アスリートのデータベースは何倍も大きいため、そこを改善する必要性がある。


2. 怪我のリスク

男性と比して女性の方が重心が低く、骨盤が広く平らであるため、統計的に見ても、膝に怪我(前十字靭帯断裂など)をしやすい傾向にある。このような男女の違いをトレーニングの計画や分析において考慮することで、女子チームにおける怪我のリスクを更に軽減することが可能となる。


3. パフォーマンス

VO2maxが低く、乳酸値が高いと、平均最高速度が低くなる。従って、これらの値も男性の値と比較することはできないため、女性アスリートに応じた解析の調整が必要である。例えば、自動イベント検出(スプリント速度など)の閾値を女性アスリート向けに調整する必要性があるだろう。


4. サイクル

女性アスリートの毎月のホルモンの変動もパフォーマンスに影響を及ぼしており、不適切な負荷管理は月経不順につながることもある。従って、トレーニングの強度を女性のサイクルに適合させる必要がある。つまり、卵胞期にはより集中的なトレーニングを行い、黄体期には再生的なトレーニングを行うことが理想的だといえる。


5. テクノロジーの実装方法

日々の練習や試合におけるパフォーマンス・負荷を計測する際、性別による違いを考慮したうえでセンサーを実装する必要がある。HRFセンサーやトラッキングセンサーを内蔵したチェストストラップや機能性ベストは、男性・女性それぞれのアスリートに快適にフィットし、滑ったり不快感を与えたりすることがないようにする必要がある。そうすることで、アスリートはその能力を最大限に発揮し、センサーはデータを隙間なく記録することが可能となるだろう。


女子スポーツにおける今後の挑戦

ライブデータに基づくトレーニングや試合の分析は、負荷の管理、個々のパフォーマンス能力の向上、怪我のリスクの軽減、リハビリテーションの管理など、最も効率的かつ効果的な方法の一つとなっている。


また、視聴者数の増加、メディアの注目度の向上、スポーツ施設の観客動員数の増加などに鑑みても急速に発展を遂げている女子スポーツでは、チームやアスリート自身も、より高いレベルのパフォーマンスを求めている。


ヒューベル氏たちは、女子スポーツにおける個人の要求が、あまりにも長い間、ほとんど盛り込まれてこなかった現状を受け、非常に大きなパフォーマンスの可能性が女子チームの中に眠っていることを確信しているという。


ヒューベル氏をはじめ、同社のスポーツ科学コンサルティングチームは、女子チーム関係者と共に、既存のアプローチに挑戦し、データと知識のギャップを埋め、選手からフィードバックを集め、ライブパフォーマンスとストレスデータおよびその分析を効率的かつ有意義なものにするための新しい方法に取り組んでいる。


引用元:https://kinexon.com/blog/sports-tech-equality/








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